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    澁澤先生コラム

    「中学生とエネルギー・環境教育」

    エネルギー・環境教育が抱える、中学生という時期ならではの留意点と課題。限られた時間の中でエネルギー・環境教育を充実させるための工夫と、副教材の活用方法。中学校・高等学校教育のエキスパートであり、エネルギー・環境教育の推進にも貢献されてきた澁澤文隆先生に、3回にわたりお話を聞きます。

    澁澤 文隆 先生

    フェリス女学院中学・高等学校教諭、東京教育大学(筑波大学)附属中学校・高等学校教諭、文部省初等中等教育局中学校課、高等学校課教科調査官、信州大学教育学部教授、同附属中学校校長(併任)を経て、帝京大学教職大学院教授、日本エネルギー環境教育学会前会長。著書に「今、始めないと!エネルギー・環境教育」(東京書籍)など多数。

    第1回 中学という時代に大切なこと

    第1回は、中学校でエネルギー・環境教育を実践するにあたり留意すべきことについてうかがいます。

    いろいろな意見を聞き、考えを磨き上げて、
    多面的・多角的な思考を積み重ねていく大切な時期。

    中学校でエネルギー・環境教育を実践するとき、どのような点に留意する必要がありますか。

    最近の中学生は、ものの見方が一方的であったり、一つの考えに固執したりして、柔軟な思考ができず、意見が一面的、断定的になる傾向がみられます。また、じっくりと吟味するのではなく、ネットなどで得た知識から単純、短絡的に考え、すぐに結論を出そうとする傾向も感じます。たとえば原子力発電の議論では、「原発は反対するもの」と決めてかかり、異論に対しては揶揄する。放射性廃棄物の処理・処分についても、「自分はそもそも原発に反対だから関知しない」と思考停止になる。 主体的、協働的で、深い学びに至る学習指導の推進が要請される一方で、実際には、生徒たちは塾通いのもとペーパーテスト対策に追われています。また、SNSの世界に幼い頃から慣れ親しみながら成長する環境下で、協働で取り組み深めることを忌避するきらいがあります。このようななか、合理的・現実的に考える必要のある社会的課題について、話し合い・議論が成立しにくくなっているように思います。

    学校で実施する際のポイントは?

    中学生の時期は、いわゆる「反抗期」です。反抗は理想を描き求めるが故の行動であり、自分なりに主張したいことが出てきていることの表れですが、実際にはいろいろな面でまだまだ未熟・未完成であり、表層的な理解にとどまっている状態にあります。変化の激しい世の中に対応しながら生きていく力を育むためには、柔軟な思考と、意欲的に学ぼうとする姿勢が必要です。特に、エネルギー問題のような地球規模の課題について考えるときは、「協働による学習の場」を積極的に設定し、結果的に多面的・多角的な視点から深く考えるトレーニングを積み重ねるような学習指導が重要となります。
    作文指導を例にとると、作文を書くに当たってはまず自分の体験、考えなどを整理し、起承転結などに留意しながらひとまず文章化します。それで完成、提出ではなく、より良いものにするためには他の人に読んでもらって自分とは違う視点からの感想・意見を聞き、それを踏まえて自分らしさを失わないようにしつつ吟味し書き直すことが必要となります。「書いたら終わり」ではなく、いろいろな感想・意見を聞いたうえで「自分の考えを磨き上げる」という吟味の営み、ステップを設けることが必要なのです。

    多面的・多角的な思考を養うためには、「初めに結論ありき」で議論を軽視する、「勝ち負け」を意識して討論には参加しないといった自己本位の意見・主張に固執した姿勢から脱却しなければなりません。協働の学習の場を大切にして積極的に話し合いに参加させ、自分の考え・主張を磨き上げるような働きかけが重要です。

    エネルギー・環境教育で扱うテーマは、すぐに結論が出るようなものではありませんし、むしろ出してはいけません。変化の時代に対応し生涯にわたって考え続けていく、時間をかけて考えを磨き上げる、それまでは、自分とは違う意見、反対の意見も含めたいろいろな意見をできるだけ多く聞き、多面的・多角的に吟味する。そんな営み・トレーニングがエネルギー・環境教育を通じてできればよいと思います。

    次回「第2回 教科学習と、総合的な学習の時間の活用」
    限られた時間の中でエネルギー・環境教育を実践する工夫について聞きます。