北先生コラム
「小学校におけるエネルギー教育」
小学校で実施するエネルギー教育の課題とは? 教科との関連は?限られた時間の中でエネルギー教育を充実させるための工夫、指導上のポイントとは?初等教育の最前線に長年携わってこられた北俊夫先生に、3回にわたりお話を聞きます。
- 第1回 小学校におけるエネルギー教育の現状と課題
- 第2回 教科の中での扱い方と工夫
- 第3回 小学校で実施するエネルギー教育のポイント

北 俊夫 先生
東京都公立小学校教員、東京都教育委員会指導主事、文部省(現文部科学省)初等中等教育局教科調査官、岐阜大学教授、国士舘大学教授を経て、現在一般財団法人総合初等教育研究所参与。
第1回 小学校におけるエネルギー教育の現状と課題
第1回は、小学校におけるエネルギー教育を考えるにあたって、
まず現状と課題、そして課題解決のためのヒントを教えていただきました。
「時間がない」という大課題。そして、エネルギー問題を取り上げることの難しさ。

小学校では、どのようなエネルギー教育が行われていますか?
多くの学校では「エネルギー教育」の括りで省エネや節電などの実践が行われていますが、ほとんどが環境教育としての取り組みであり、「エネルギー教育」が行われることは極めて少ないのが現状です。その背景には、学習指導要領においてエネルギー教育に関する内容が重点として示されていないことがあります。「エネルギー」という記載があるのも理科のみです。
教育現場の先生方からはどのような声がありますか。
先生方は教科指導のほかに「食育」「キャリア教育」「消費者教育」「情報教育」など多種多様な「○○教育」が求められ、常に忙しい状態です。エネルギー教育をやってみたくても時間がない、という大きな問題があると思います。
また、小学校は教科担任制ではなく、ひとりの先生が全教科を教えます。エネルギー問題に関心が高い先生ばかりではないでしょう。エネルギー問題に詳しくない先生をサポートするような副教材があればいいのですが、手元にない、あっても指導方法が分からないという問題もあるようです。
「エネルギー」というテーマが難しいということもあるのでしょうか?
3・4年生の社会科では「飲料水・電気・ガス」から1つを選択して扱うことが学習指導要領に示されています。この選択的な扱いは平成元年版から示されていますが、これまで「電気やガス」が選ばれることはほとんどありませんでした。エネルギーは、子どもにとって身近ではなく、目に見えにくい、難しいものだったということでしょう。 さらに今、「電気」を取り上げようとすると、どうしても原子力発電のことが話題になり、福島の事故を連想してしまうという声も。エネルギー問題を取り上げる必要性があることはいうまでもありませんが、価値観が多様化している中で「どのように取り上げるか」は工夫の要る課題だと思います。
エネルギー教育の時間を作るのではなく、
今ある教科・カリキュラムにエネルギー教育の視点を取り入れる。
時間がとれないことは大きな課題ですが、どのような対応策が考えられるでしょうか。
エネルギー教育の時間を新たに設けるのは難しく、指導内容を定めることも先生方にとって負担になります。そのような方向ではなく、今ある教科、今あるカリキュラムに、いかにエネルギー教育の視点を入れるか、普段の授業の中でエネルギー教育を意識した指導をしていくことが重要であり、現実的です。どんな教科・単元にどのような視点を加えてエネルギー教育につなげるかは工夫のしどころですが、そのためのヒントやアイデアが参照できる資料があると先生方への支援になると思います。
次回「第2回 教科の中での扱い方と工夫」
エネルギー教育に関連する教科学習の内容や指導の工夫について具体的に聞きます。