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    村松浩幸先生コラム

    「オモシロイを形に」が最大の魅力!
    技術を評価し活用する力を育む技術科のエネルギー学習

    中学校技術・家庭科技術分野(技術科)の授業といえば、木工や金属加工、はんだ付けなど、ものづくりのイメージが強いかもしれません。しかし、現在の技術科ではとても充実したエネルギー学習が行われていることをご存知でしょうか。
    技術教育学を専門に、技術科教育の実践研究・教材開発を行っている信州大学の村松浩幸先生に、技術科におけるエネルギー学習の内容や目的、授業のポイントなどについて聞きました。

    村松 浩幸 先生

    信州大学学術研究院教育学系教授 博士(学校教育学)
    専門は技術教育学、主な研究テーマは「技術教育における Creative learning」。
    FabLab長野ディレクター、一般社団法人Nagano Tech Style Lab代表理事。
    日本産業技術教育学会・元会長/NHK高専ロボコン顧問/NHK Eテレ番組委員。
    全国の先生方が利用する技術の教材集サイト「ギジュツドットコム」も運営。
    日本知財学会特別賞(2012)文部科学大臣表彰科学技術賞(2015)日本産業技術教育学会論文賞(2010、2023)など複数の受賞。

    第2回 実践的・体験的なエネルギー学習のための教材活用

    村松先生は、「エネルギー変換の技術」の基礎的概念を体験的に学ぶ教材「電力マネージャー(通称:でんまね)」を開発し、さまざまな授業実践を行っています。また、技術の面白教材集「gijyutu.com」を長年にわたり運営。技術教育に関わる教材の情報や情報交換の場も提供されています。教材の活用と体験的な学びの重要性について聞きました。

    知識だけで体験がないのは非常に危うい状態です。AIの時代だからこそ、
    現実のモノに触れることや体験がますます重要です。

    「でんまね」はどのような教材ですか。

    基板とPC用ソフトを使って発電や電力システムについて体験的に学習できる教材セットで、風力発電実験「でんまねWind」、発電量測定実験「でんまねPower」、電力ネットワーク体験実験「でんまねNetwork」の3種類から構成されます。

    ●風力発電実験「でんまねWind」

    厚紙を用いた風力発電のタービンを設計・製作し、発電電圧をコンテスト形式で競います。生徒各自がオリジナルの羽根を作り、風力アダプタユニット(取り付け台)に装着して、計測ソフトで発電電圧を記録します。どのような形状や大きさの羽根がいいのかを考え、発電効率を高めるために子どもたちはさまざまな形の羽根を考案し、実験を重ねていきます。
    一通りの実験が終わった後、風力発電以外の発電方法の紹介や発電効率の違いについて解説します。すると、先ほどまで一生懸命に制作していた風力発電の発電効率がおよそ2割であることや、エネルギー変換効率が最も高いのは水力発電であることを知り、子どもたちは大きな驚きを示します。自分たちで風力発電を実際に体験しているからこそ、発電効率の違いを実感をもって理解できるのです。

    子どもたちはさまざまな形状の羽根を考案
    風力発電による電圧をリアルタイムで確認
    エネルギー変換効率は発電方法ごとに違うことを学ぶ

    ●発電量測定実験「でんまねPower」

    手回し発電機を使い、発電した電圧、電流、電力量をリアルタイムで測定します。測定した電力量を家庭で使っている家電製品の消費電力と比較したり、電気代に換算することで、電力量をより実感的に理解できます。例えば、手回し発電機で生み出した電力では、朝に使うドライヤーさえ動かせないことに気づくでしょう。さらに、発電所の発電規模と比較することで、私たちの社会で消費されている電力がいかに膨大であるかも体感できます。

    でんまねPowerで電力を測定
    発電所の発電量と比較してみる

    ●電力ネットワーク体験実験「でんまねNetwork」

    手回し発電機を発電所に、小型の扇風機を、電力を消費する工場・家庭・オフィスに見立てて、送配電の仕組みと電力ネットワークを疑似体験します。生徒は、①電力会社の発電所役、②電力会社の中央給電司令室※役、③消費者役に分かれて、それぞれの役割を担当します。

    ※中央給電指令室:電気は大量に貯められないため、電力の消費状況を監視しながら発電所の出力を調整することで、電力の消費量と発電量を一致させる役割を担う施設。

    でんまねNetworkのソフトウェア画面
    中央給電司令室の指示を受けて発電

    まず参加者全員に、冒頭で1日の消費電力量が変化することについての説明を行い、その説明に合わせて、各自が発電、電力供給、電力消費を担当します。
    消費者役は工場・家庭・オフィスに見立てた3台の扇風機を日中の消費電力量に合わせてON/OFFし、電力の消費量を増減させます。例えば、朝は電気がほとんど使われないので扇風機は1台しか動かしませんが、昼は工場・家庭・オフィスのすべてが電気を使うので、3台の扇風機をすべて稼働させます。すると電力がたくさん必要になり、「でんまねNetwork」の画面を見ている中央給電司令室役は、発電所役に「もっと発電してください」と指示を出します。それを受けて発電所役は全力で手回し発電機を回します。一方で夕方になると、電力消費は減るので、発電量が逆に過剰になり、さっきまで必死に回していた手回し発電機の速度を緩めることで対応します。約2分間の1日の電力需要の体験が終わると、電力需要グラフとのズレ具合から、ソフトが電力供給の適切さを5段階で提示してくれます。
    このような1日の消費電力の変化に合わせて発電量を調整するのは難しい作業ですが、発電機を回したり、1日の変化もあるので、子どもたちは大変盛り上がります。

    この体験を通して、電力の消費量が1日のあいだで大きく変動すること、また、発電量と消費量のバランスを確認し、ずれがあれば指示を出して調整すること、そして電力会社が日々この作業を行っていることを実感することができます。

    体験的な学びによって、
    子どもたちにはどのような変化が見られますか。

    電力会社の仕事を子どもたちにたずねると、「発電する」、「電気を送る」、「停電を復旧させる」、そのくらいしか出てきません。需要と供給のバランスをとりながら安定供給をするという大事な仕事が見えていないのです。

    発電方法の選択についても、授業前は大半の子が「エコだから」と再生可能エネルギーを選びます。しかし「でんまねWind」の風力発電実験を通じて発電効率について知ると、風力発電は風が吹かないと発電できず、エネルギー変換効率も決して高くないことに気づきます。その後、変換効率のよい水力発電に注目するのですが、さらに学ぶと「黒部ダムのような大規模施設をつくれる場所がない」ことを知り、電力の安定供給には火力発電も必要であると理解できるようになるのです。

    子どもたちはイメージに左右されがちで、適切な知識と体験がないと正確な評価ができません。エネルギーについてどう考えるか、現状に対する理解だけでなく、未来を生きる彼らには、この先どうしていくべきか、政策や産業のあり方を適切に評価できるようになるための「教養としての技術」の学びが必要です。そのためには知識の習得のほかに、ものに触れ、見て、感じて、考える実践的・体験的学習が欠かせない考えています。

    今後はAIの活用もカリキュラムに入ってくるかと思いますが、AIは言葉や概念の関係をもとに理解しているように振る舞いますが、実物そのものを理解しているわけではありません。人間は現実世界で見る、聞く、触るなどの体験を通して、言葉や概念と実際の物事を結びつけ、本当の意味を理解します。したがって、知識だけで体験が伴わない学びは危うい状態といえます。これからはAIの時代だからこそ、現実のモノに触れることや体験がますます重要になるのではないでしょうか。

    ボードゲーム教材「エネスター

    先生が運営するgijyutu.com(技術ドットコム)にも実践的・体験的学習のための教材がたくさん公開されていますね。

    gijyutu.com」は、何か面白い教材はないか、あちこちを探しても見つからず、「ないなら自分で作ってしまえ」と全国の先生方が自作された教材や、教材の情報を共有するための場として30年にわたり運営してきました。多岐にわたる膨大な数の教材や情報が集まるようになったため、持続的な運営を目指して2025年8月に一般社団法人としました。

    エネルギー学習関連で新しいものとしては、2025年6月にエネルギー問題を学ぶボードゲーム「エネスター」をアップしました。三重大学教育学部技術・ものづくり教育講座電気工学研究室の開発によるボードゲーム教材で、中学生向けに50分の授業でエネルギー問題のあらましを楽しく学ぶことができます。サイトから誰でもダウンロードが可能です。
    ほかにも、授業に役立つアイデアグッズや、人気のシナリオゲーム教材など、さまざまな「面白教材」を公開していますので、技術科の先生はもちろん、他の教科の先生もぜひ一度覗いてみてください。

    次回 第3回「技術科におけるエネルギー学習の授業実践例」
    中学校における技術科の授業実践例や、技術科の魅力について聞きます。